毎月勤労統計問題の本質

連日のように毎月勤労統計のニュースをやっているが、報道を見る度に辟易する。

調査が誤っていた事は間違いない事実。 でもだからなんなんだ。

500人以下の企業については無作為にピックアプしたものだけで調査OKという事になってるらしい。
その時点で平均給与などの正値が出るはずがない。

500人以下の企業は給料が横並びだとでも言いたいのか。 むしろ中小企業の方が会社による給料の差は大きい。 カツカツでやってる町工場から全員が毎月3桁万円を貰ってるIT企業まで千差万別だ。

500人という数字に対した意味があるとは到底思えない。
500人以下はある一定の数をピックアップすれば、分母をいくら増やそうが結果は同じという統計学が根拠にあるとするならば、その閾値がたまたま切りの良い500でしたという事はさすがにないだろう。
世の中、人数の少ない会社ほど社数は末広がりに増えるので、おそらく事務処理能力的にやってられないという意味での閾値だろうと思われる。


少しズレるが、視聴率調査の話をすると、昔(80年~90年代)は300世帯を対象に調査を行われていた。
今は(正確な数は覚えていないが)多少増えて500~1000世帯くらいになっていると聞いた。
300世帯の頃から、「数学的にはこれで十分。これ以上数を増やしても結果は変わらない」と説明されていた。
日本全体で世帯数は増えていないはずなのに、なぜ数が増えたのかは分からないが、この視聴率調査と今回の毎月勤労統計調査とでは性質が全く異なる。

視聴率の場合、金持ちが番組を見ようが、生活保護を受けてる人が見ようが同じ1票なのである。
見る人の属性は視聴率という数字には関係しないのだ。だからピックアップ調査で成立する。
しかし給与という事になると、会社によって給料に大きく格差がある以上、基本は全企業を対象に調査をしないと正値は出ないはずだ。
日本は9割以上の就業者が中小企業に属してるという事実からも、全企業を対象とした調査が必須な事は疑いようがない。


ここからブログのタイトルに書いた問題の本質についてだが、なぜ厚労省が毎月勤労統計調査をやっているのか?
答えは簡単で、旧厚生省と旧労働省が合体して厚労省になった訳で、担当としては労働省に当たるからである。

しかし、おかしくないか? 我々国民は何のために確定申告をしているのか?個人商店から大企業まで、かなりの労力を使い、税理士さんに依頼してまで毎年税務署(=国)に人件費などの経費を報告しているのである。 つまり税務署を統括してる財務省は正値を持っているのである。

会社で言うと、給料額を把握しているはずの人事もしくは総務に聞く事なく、営業部が社員一人ひとりに聞き取り調査をしているような状態である。 しかもピックアップ調査を。徒労な上に、正値が出ない事は自明の理であろう。
確かに確定申告は年一回なので、毎月は出せないが、毎月平均給与が大きく乱高下するとも考えにくい。関係ない省庁に無駄な作業を強いるくらいなら、年一回の統計で十分ではないか。


つまり、問題の本質は日本の縦割り行政のはずである。
世界第三位の経済大国が、国民の平均給与も正しく出せないとは情けないの一言。
マスコミ・野党を中心に、誰が悪かったのかの責任追及しかしないのであれば、犠牲を払って確定申告をしている国民がもっと怒るべきである。

小泉氏が厚労省の改革に乗り出そうとしてるようで、その一環として2つの省に分割するという案が出てるようだ。 しかし、そもそも厚労省は平均給与を算出する省ではない。
分割というなら、過去の年金や雇用保険の支給額を計算し直して差額支給をする火消し部隊と、縦割り構造を少しでも是正できないかを検討・実施する抜本改革部隊に分けるのが筋なはずだ。
今のルール、業務を見直す事なく省を分割なぞ愚の骨頂である。

もっと言えば、東京などの都市部と、沖縄、鳥取、高知のような過疎部では家賃からして大きく差があるわけで、「東京、大阪、愛知を中心に500人以上の全企業を調査した結果、沖縄の人の年金がアップしました」というのもどうなのか? 地域差が激しいという現実があるにもかかわらず、全国の平均値を持ってして、年金や雇用保険額をはじき出すというルール(500という閾値ルールも含めて)自体を見直すべきではないか。

今国会で議論されてる事、マスコミで報道されている事が、漏れなくズレた事のように感じてならない。